授業での学び

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Core2の授業については、既にS.A.さんが投稿していますが、具体的に何を学び、どういうことを思ったかということを今日は綴ってみたいと思います。



Core2の中で私が一番好きな授業はイタリア人教授によるOperationの授業です。イタリアンレストランにいる陽気なおっちゃんというというよりは、いつも細みのビシッとしたスーツを着たちょい悪ダンディ風の教授です。授業が非常によく準備されていて、話も面白いので、3時間続く授業でも自然と惹きつけられます。

ここ2週間は、トヨタやZARAのケースを使いながら、「リーン経営」を学んでいます。リーン経営とは、トヨタが開発した生産モデルで、MITの教授がトヨタの強さの秘密を長年かけて解き明かして体系化したものです。その中の1つの重要なコンセプトは、原材料を安く大量の購入してどんどん生産して売っていくというプッシュ型の大量生産方式ではなく、顧客のニーズに応じて原材料を逐次投入していくというプル型の生産方式への転換です。
これは顧客ニーズの多様化や環境変化の速さに対応しなければならない現代の市場にとても有効な生産方式で、在庫を少なくすることにもつながります。

顧客が注文してから作るので、当然早く作らないと顧客の不満がたまります。このために、トヨタは北米にも日本にも大きな生産拠点を維持しています。途上国で安い人件費のもとで大量生産する方式では、日本への輸送に時間がかかってしまうからです。ZARAも同様です。ユニクロやGAPのようにバングラデッシュ等で生産するのではなく、欧州に巨大な生産物流拠点を持っています。一見非効率も見えますが、需要に応じた生産ができるため、売上を伸ばしやすいのはもちろん、在庫を積み上げずに済むので非常に効率的なのです。リーン(=贅肉を落とした)という名前をここから来ています。

ここまでが授業で学ぶことですが、興味深いのは、生産拠点が市場の近くにあるということです。今までは、日本企業が成長しても生産拠点がどんどん海外に移っていたので、国内の雇用への影響は大きくありませんでした。仮に日銀が金融緩和をして、銀行がお金を貸し出そうと、日本国内には投資機会が少ないので、海外の市場・生産拠点にばかり投資していたのです。結果、日本経済はバブル崩壊後もなかなか回復することがありませんでした。

しかしリーン経営が広がれば、生産が国内に回帰します(市場が伸び悩んでいることは根本的に問題ですが)。そうすれば、単純に雇用が増えるだけでなく、金融政策もうまく機能するようになるのではないかと思うのです。実際、リーン経営の概念自体は決して新しいものではありませんが、消費者の消費行動の多様化とトレンドの移り変わりの速さはここ10数年で加速しているので、まだまだリーン経営が広がる余地はあるのではないかと思っています。


Core2の最難関の科目に、Corporate Financeがあります。NPVを計算したりして、投資機会又は企業そのものの評価を行うことがメインのテーマです。

私は仕事でCorporate Financeの世界にどっぷり浸かっていましたが、それでもCorporate Financeではっとさせられることはあります。債券か株式かの資金調達を判断する際、負債調達コストは株式調達コストより安いから、負債の比率を上げてレバレッジをかけるほどWACCが下がり、結果的に企業価値が上がる、という主張がなされることがあります。グロービスのホームページのMBA用語集という所にもそういうことが書かれています。が、これは完全に間違っています。負債比率が上がると、株主にとってのリスクが増加し、エクイティβが大きくなるため、WACCが単純に下がることはないのです(節税効果が理由で、負債比率を上げればWACCが下がるというのは正しいです)。

負債比率をどこに置くべきかというのは企業にとって非常に大きな課題です。ファイナンスのバックグラウンドがあるからこそ、その誤りが現実の世界で散見され、かつその影響は非常に大きいということの察しがすぐにつきますし、実務経験があるからこそ改めて理論を学ぶことによる発見が多いということも言えるような気がします。



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